p.185 66. 情緒障害特別支援学級

 平成18(2006)年の学校教育法一部改正で「情緒障害特殊学級(現・特別支援学級)」について、それまで通常学級に措置されていた「学習障害者(LD)」と「注意欠陥多動性障害者(ADHD)」も通級(決められた時間だけ、その学級に“通う”こと)による指導の対象になりました。

 さらに平成21(2009)年には「情緒障害特別支援学級」が「自閉症・情緒障害特別支援学級」と改名されました。これは、平成19(2007)年、国連で「42日・自閉症啓発デー」が制定されたのを受けたもので、自閉症(とそれに類する障害)について正しい理解啓発を目的にしたものでした。つまり、自閉症(とそれに類する障害)は、情緒障害とは違うものである、と示すための名称変更です。それまで「自閉症」が「情緒障害」の一種であると分類されていた記述も改められました。
 
 「情緒障害」という言葉が最初に用いられたのは、昭和36(1961)年の児童福祉法改正のによって開設する事になった「情緒障害児短期治療施設(現在もこの呼称のまま全国に40ヶ所以上設置されています)」という “更生” 施設だったようです。チックや吃音などの症状や自傷や盗癖、おうむ返し、多動、かん黙(しゃべらない)、不登校、……などなどを「神経症状・非/反社会的行動」として総じて「情緒障害」と呼び、虐待やいじめなどの被害を受けることによる精神的トラウマが原因で引き起こされるものと捉えられていました。この中には、必ずしもそれが原因でないものも含まれていますが、自閉症の子の行動や症状も全て「親の愛情不足が原因」「テレビ育児のせい」などとされてきました。やっと脳原性であるというのが定説になり一般に浸透し始めたのは、20世紀が終わる頃だったと記憶しています。

 こういった経緯があって「情緒障害」という言葉が「心因性(精神障害)のもの」のみを指すようになり、他は「脳原性(発達障害)」と認識し直したわけです。学級の名称がなぜ「“発達障害・情緒障害特別支援学級」にならなかったのかは分かりません。平成172005年、発達障害者支援法施行のとき示された発達障害の定義は「自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するもの」とされており、「自閉症(とそれに類する障害)」とイコールだと思うのですが、何か意図があるのでしょうか。
 
 心因性のものの原因は「虐待やいじめ=排除」とされています。もしそうなら、その子の命と生活を守ることをもちろん最優先にすることは言うまでもありませんが、その更生・治療よりも取り組まなくてはならないことは、なぜそのようなことが起ったのか、社会のどこをどう変えればそうならいのか、緊急の意識を持って考えることではないでしょうか。更生・治療を求められるのは、その子でなく、社会と社会構造のほうなのです。

 知的障害と目されている人、精神障害のある人、発達障害のある人の「障害」に向けられる視線は、むしろ「医療モデル」が強い。知的とか発達とかいう言葉そのものが当人だけにその解消を求める「医療モデル」です。個人にだけ解消を求めるならその方法は、別の場所で暮らさせられたり、投薬されたりということになります。

 これほど「社会モデル」で捉え直さなくてはいけない、周囲が意識を変えるべき子どもたちはいないのではないでしょうか。さらに言えば、今はまだ傷が癒えないこの方たち自身が、権利意識を持ち権利行使(セルフアドボカシー)のために立ち上がることは、インクルーシブ社会実現にとって、不可欠なことだと強く思います。

0 件のコメント:

コメントを投稿