p.117 49. 交通アクセシビリティ

 「アクセスの良さ(アクセシビリティ)」と言えば、たいがい交通のことですね。また、インターネットが普及して以来、情報が得やすいことについても「アクセスがいい」と言うようになりました。さらに、スマートフォンやタブレット端末などモバイル通信機器が普及してからは通信についても「つながりやすいという表現で使われます。


 「交通アクセシビリティ」は、必ずしも障害のある人だけを対象にした言葉ではありません。エレベータやスロープ、ノンステップ車両などバリアフリー整備(交通バリアフリー)はもちろん、移動手段の種類/速度/対価/使い勝手についても用いられます。
 「情報アクセシビリティも同様で、音声解説や字幕などバリアフリー整備(情報バリアフリー)のみならず、モバイル機器・通信機器のつながりやすさなどにも使われます。

 交通も情報も、バリアフリー以外のアクセシビリティについては「モビリティと呼ばれます。

 情報バリアフリーの配慮を考える時、手っ取り早いのが「自分が全く言葉を知らない・字も読めない外国の街に行って暮らし(ことを想像し)てみる」と言うこと。現状の自分のまま、自ら情報障害(認知障害)のある当事者として実感することができるので、どこに障害が生じていて、何を求めればその障害を解消出来るのか具体的に考えるのが容易になります。

 標示のピクトグラムや、自動販売機・ATMの多言語表示・音声/音声ガイドの電光掲示板表示、誘導音声、(自分が理解できる言語の)字幕つき/副音声つきのテレビ放送、自動翻訳機、通訳….などなど。

 情報バリアフリーについて、この国での最初のアクションは平成9(1997)年の放送法改正による「視聴覚障害者向け番組の放送努力義務化」の規定だったようです。この第4条第2項により10年のうちにすべての放送に視聴覚障害のある人のための字幕を付けることが、目標に掲げられました。平成18(2006)年には総務省が「デジタル放送時代の視聴覚障害者向け放送に関する研究会」を設置しています。平成19(2007)年には字幕放送について、NHK100%、民法平均89%まで達成されました。音声解説については平成29(2017)年までに10%付与の目標を定めています。

 放送だけではありません。近年、最も強く求められている情報バリアフリーに「ウェブアクセシビリティ(インターネット環境のアクセシビリティ)」があります。

 そもそもパソコンは視覚情報に頼って設計されており視覚障害のある人にとっては役に立たないものでしたが、用途が限られているものとしてあまり問題にされていませんでした。しかしインターネットが普及して家電(生活上の必需品)になってから、この障害の解消は急務になりました。この取り組みは、パソコンの大手会社が米国に集中していたことが幸いしてとてもスムーズに行われた印象があります。米国では1990年にADA法(障害のあるアメリカ人法=障害者差別禁止法)が制定されており、新製品の規格には障害のある人にとっても使いやすい配慮が標準装備として求められていたからです。

 音声読み上げ機能は、視覚障害の人だけでなく読字障害のあるひとにとっても役に立つものでした。

 音声つき動画も長時間再生できるようになったため、聴覚障害のある人の情報に不利がないような配慮、例えば字幕を容易につけられる機能など充実してきました。


 しかし、せっかく音声読み上げ機能がついていても、テキスト情報でない文字(絵)には使えません。また視覚情報を使えても色遣いによっては認識できない場合もあります。

 標準装備が十分機能するようにするべき配慮が「ウェブアクセシビリティ」です。

ウェブアクセシビリティについては、下記のホームページで分かりやすく解説されています。↓

http://www2.nict.go.jp/ict_promotion/barrier-free/103/accessibility/whatsacs/

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