p.152 55. 合理的配慮

 「合理的配慮」は「障害の社会モデル」と同じくらい、これからの社会、教育にとって重要なキーワードです。

 具体的にはどんなことを指しているのでしょう。まず最初に思いつくのは、環境(学校)のバリアフリー化(在校生から配慮の要請があった場合の設備設置・改修など)や、ユニバーサルデザイン化(そもそも多様な在校生を想定して設備・建物を設計する)ということ。

 それから、拡大・点字教科書や音読ができるテキストデータの提供や、コミュニケーション補助機器、身体介助・行動擁護介助だけでなく手話や通訳を含むパーソナルアシスタントなど、在校生のニーズを満たす必要な人材や資材を用意することも、合理的配慮です。

 これら環境の調整も個々のニーズに応じることに加えて、障害種や医療的経歴に惑わされることなく、環境との関係、個別性に着目し日々、有機的に行うべき配慮があります。

 例えば、IT機器の持ち込みなど、日常生活で在校生が使う必要な物で、かつ必要がない在校生がいたり/持ち込んではいけない校則・規則の物について使用を認める事も合理的配慮です。
 
 さらにそれは教育の内容や手法そのものにも及ぶ事もあります。
 例えば、考査(試験・テスト)の仕組み。
 点字版や拡大版を用意したり、持ち時間を増やしたり、(読み上げが必要な場合など)別室受験を許可したり、文字盤で指し示したものを介助者が転記したり、……これまでも「公平に」考査に参加できるようにと色々な配慮が、その都度、考案されてきました。しかし「公平」であることが必要以上に求められる割にそれには限界があり判断もまちまちです。

 そもそも、評価が相対的なものではなくなり、(建前上は)子どもと子ども、学校と学校を競わせるための材料でなくなった今、考査は何のためにあるのかというと、その子が「学んだことを理解しているか測るため」であり厳格にその目的のためだけに考査を用いるなら「公平」ということに神経を尖らせる必要がなくなります。

 障害がなくても「あがり症」で実力が発揮出来ない子もいるでしょう。試験で高得点を得る要領が長けているが理解しているわけではない子もいるでしょう。試験の日、恋の病で気もそぞろという子もいるでしょうし……。所詮「理解度」ましてや「人の能力(能力も環境との関係性……社会モデルで測るべきことです)」など正確に測ることはできないのです。
 正確に測ることはできないと認めれば、もっと柔軟で有機的な配慮を求めることができ「学び」の質は向上するはずです。
 しかし実際は、それは進学や就職などの人生に大きく作用する局面で、全てのひとに完璧に公平に配慮されたかのように迷いなく採用されています。

 このように、教育が「評価」というサービスに偏重するあまり「評価できない=教育できない」という事がまかり通っている事に至っては、究極の合理的配慮の欠如と言わざるを得ません。

 就学前相談のような場所で「評価不能=教育不能」という判断によって子どもが教育の機会(と共に育ちあう権利)をいかにあっさり奪われるかはトッキーが受けた「仕打ち」を読んでいただいた通りですが、さらに「評価不能」という理由で、特別支援学校・学級への転学を勧められる子どもは結構いるのです。「理解しているのかどうか測れない」のと「理解できてない」のは、全く別のことです。むしろ、測れないということを認めて、本人が「理解できない」と言うなら「どこが」ではなく「なぜ」というところに注目した行動が合理的配慮ではないでしょうか。迅速で根本的な調整が、ぜひとも必要なことです。

 加えて、個々の在校生のニーズに応じるのではなく、全ての子どもを「社会通念」によって抑圧しない態度を示すため、教科書の記述や授業内容について調整を求めるべき合理的配慮もあるはずです。


 例を挙げてみます。
① 小学校低学年で「生んでくれてありがとう、育ててくれてありがとう(ううーっ、悪趣味。何で子どもにこんな事を言わせるのだ、と言うのは私の個人的感情として)と親に感謝の気持ちを伝える作文」を書かせる授業は、親からネグレクトなど虐待を受けている子どもや、貧困のため家庭に親がいる時間が少ない子どもなどを追いつめています。

② また図書室の蔵書の中には、発行年が古いものもあり、例えば「……耳も聴こえず目も見えない、言葉もしゃべれない《可哀想なヘレンは、……」などと始まる偉人伝によって、障害のある子どもは追いつめられるでしょう。


③ 中学生の保健体育の教科書に出てくる「思春期になると異性に興味が出てきます」という記述は、性的マイノリティの子どもを場合によっては自死まで追いつめ孤立させる原因になっています。

 こういう大きな調整・配慮が必要な事は、追いつめられたことのある人の経験からしかなかなか気づくことはできないものが多いのです。これら調整を求める声を挙げたり、解消のための活動することが必要です。

文部科学省が示している「合理的配慮の例」は、下記のURLで読むことができます。障害種別に列挙してあります。↓
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/044/attach/1297377.htm



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