p.173 63. ノンステップバス

 数年前までは東京都内でも時刻表に「◎印はノンステップ(低床式)バスでの運行」と書かれているほどしか運行がなく「車いすユーザーはその時間にしか乗らないと思われては困る」とそれまでと変わらず思うままの時刻にバス停に立ち、後ろ扉近くに座る乗客の手を借りて三段くらいの階段をあがって乗り込んだりしたものです。

運転手さんがスロープを出しているところ。

 今やほとんどの路線バスがこのタイプ、すっかり標準化しつつあり、もはや都市部では階段がついた路線バスを知らない子どももいるのではないかと思います(トミカ大好きなんていう子どもは、運悪く階段つきに遭遇したら「レトロ車輌だ!」なんて逆に興奮して喜ぶかも知れません)。
スロープを使って乗り込むところ。低床式というとこのスロープを思い浮かべる人が多いけれど、前扉に階段がないこと・スペースが広いことも大きなメリット。杖を使ったりキャリーカーを引く高齢の方や子ども連れ、あらゆる人が乗り降りしやすくなった。





 今後、地方でも新車導入を機にあっという間にこのタイプが普及していくでしょうが、問題は路線バス自体が存続の危機にあるということ。スロープが錆び付いていて出せず運転手さんが冷や汗をかいたり、車いすスペースの座席の畳み方を知らない運転手さんが故障中だと決めつけたり……など苦笑いする事件が旅行先で必ず起り、路線バスがいかに利用されていないか判ります。

 そもそも自家用車の普及によって乗客数が激減したことが原因なのは皆知っていることですが、子ども・障害のある人・高齢の方など運転しない人たちや、嫌いだったり買うお金がなかったりして車を持たない人たちの自“律した生活にとって、公共交通は欠かせないものです。いつでも思いついたときに買いだしに行ったり、友だちに会いに行ったり、散歩に出かけたり……できます。これが「家族に車を出してもらう」となると、好きなときにというわけにはいかなくなります。若者や生まれつき障害のある人はともかく、高齢の方はじめ中途障害の人には「人のやっかいになりたくない」という文化が染み付いていることが多いので、自分の生活上必要なことまでも「贅沢だ」と遠慮してしまうことも増えてしまうかも知れません。
 こう考えれば、高齢の方や障害のある人が、毎日施設のバスで送迎され日中(特別支援学校を含め)デイケア施設など「特別に用意された場所」に「分類された種類で集められ」過ごす、という半収容スタイルが「世の中に必要なこと」と求められてしまう原因になっているのは間違いありません。つまり、地域(コミュニティ)が多様な成員を失う原因にもなっているのです。

 路線バス・コミュニティバスの整備と再興は、今後、訴えて行く必要があることです。


これはリフト付き観光バス。観光バスは床下に収納スペースがあるため
床の位置が高く乗車する階段も螺旋状で狭く車いすユーザーや
高齢の方など足の不自由で階段を使えない人にとっては
「アウト!」なものが多い。リフト付き車両がなかなか普及しないのは残念。
バス会社各社で総数の何割かはリフト付きにするよう勧めるとか、
啓発も兼ねたツアーを組むとか、……きっかけがあればたちまち
スタンダードになりそうだけれど。

0 件のコメント:

コメントを投稿