p.26 8.介護の社会化

 「介護の社会化」という考え方が社会に一気に浸透したきっかけは、間違いなく平成122000)年の「介護保険」の登場でした。
 この国が本格的に高齢化社会に備えた「対策」を模索しはじめたのは1990年代初頭です。平成元(1989)年に高齢者保健福祉推進10カ年戦略「ゴールドプラン」が策定されホームヘルパーの養成や特別養護老人ホーム・短期入所など施設の緊急整備、自治体による在宅福祉対策の実施など具体策が掲げられました。このプランは5年後に高齢者保健福祉計画「新・ゴールドプラン」としてより在宅介護支援に力を入れる方向で全面的に改訂され「介護保険制度」の実施を前提として、それに必要なヘルパーや訪問看護ステーションの設置数が具体的に示されました。
 介護保険制度開始の前年、新たに「ゴールドプラン21」が示され高齢のかたが生涯「活き活きと過ごすための社会や地域による支えあいが強調されます。グループホームの設置も初めて推奨されました。このとき「家族介護には無理があった。しかし安易に施設入所を勧め、それまでの生活をあきらめてはいけない。高齢者介護の問題は地域・社会全体で支えましょう」という啓蒙が一気に進んだのです。

 この3つのプラン策定の流れを見れば、「思ったより急激に高齢者が増えそう。施設整備にお金がかかり過ぎる。在宅のままそれを支えるという方向に転換しよう」という思惑があったことは間違いないと思いますが「家族の責任」というこの国の社会(文化)の常識は少なからず変化し、個人が負わされていた目に見えない重圧が随分と軽くなり、少なくとも立ち止まって常識を疑い、モノ申せる雰囲気になるには効果絶大でした。

0 件のコメント:

コメントを投稿